前澤友作が手掛ける新サービス「カブアンド」:上場前と上場後の利益と問題点
前澤友作氏が発表した新サービス「カブアンド」(KABU&)は、日本初の「株主リワード型」ビジネスモデルとして注目を集めています。このサービスの特徴は、利用者が日常的な支払いをすることで「株引換券」を受け取り、将来的にその株式の価値が上場によって増大する可能性を持つ点です。今回は、利用者がどの程度得をする可能性があるのか、そしてこの仕組みに潜む課題について解説します。
1. カブアンドの仕組みとサービス内容
「カブアンド」では、電気、ガス、モバイル通信、光回線、ウォーターサーバー、ふるさと納税などの対象サービスを利用することで、支払い額に応じて「株引換券」を獲得できます。この株引換券は、将来カブアンドが上場を果たした際に普通株式へと転換される仕組みです。
- 還元率
通常会員は支払い額の10%、プラス会員(有料サービス)はその2倍の20%相当が株引換券として還元されます。
例えば、月5,000円を支払うと、年間で通常会員は6,000円分、プラス会員は12,000円分の株引換券を受け取ることが可能です。 - 株式の初期評価額
現時点では、1株あたり約5円と仮定されており、これを基準に引換券の枚数が決まります。ただし、この価格は市場価値ではなく、上場後の株価は異なる可能性があります。
2. 上場前後の利益シミュレーション
- 上場前: サービス利用者が受け取る「株引換券」の段階では、現金化はできません。未上場株式には市場が存在しないため、あくまで潜在的な価値として保持することになります。
- 上場後の利益予測
- ケース1:株価が10倍に成長
上場後、1株5円の評価が50円に上昇した場合、年間で受け取った12,000円分の株引換券は約12万円の価値になります。これは利用額に対して10倍のリターンを得る計算です。 - ケース2:株価が2倍に成長
株価が1株10円まで上昇した場合、12,000円分の株引換券は2万4,000円の価値となり、リターンは約2倍です。
上場後の利益は、株価の成長率や引換券の獲得枚数に大きく依存します。
- ケース1:株価が10倍に成長
3. ロックアップの可能性
このサービスには革新性とともに注意すべき課題や問題点があります。ここでは、「ロックアップ」の可能性の問題点について詳しく解説します。
3-1. ロックアップの問題点
- 制限期間
通常、ロックアップ期間は6か月から1年程度で、上場直後の株式売却を防ぎ、株価の安定を図る目的で設定されます。 - 売却可能タイミングの制限
カブアンドが利用者に発行する種類株式にも、ロックアップが適用される可能性があります。この場合、株式市場での自由な売買が制限され、利用者は想定していた利益を短期的に得られないことがあります。 - 価格変動リスク
ロックアップ期間中に市場環境が変化し、株価が下落した場合、株式の価値が大幅に減少するリスクがあります。
4. サービスにおける主な問題点
4-1. 上場の不確実性
日本の企業の上場率は非常に低く、前澤氏が過去に成功を収めた経営者であっても、カブアンドが上場に成功する保証はありません。上場を果たせなければ、株引換券の経済的価値はほぼゼロとなります。
4-2. 株式の価値が不透明
現時点で1株あたり約5円と仮定されていますが、これは市場価値ではなく、上場後の価格は予測が困難です。仮に上場しても期待した株価に達しない可能性があります。
4-3. 種類株式の制限
利用者が受け取る株式は種類株式である可能性が高く、議決権が付与されない場合、株主としての権利行使には制約があります。これは、株式所有の象徴的な意義を薄れさせる可能性があります。
4-4. 現金化の困難さ
ロックアップがなくても、未上場株式の市場での流動性は極めて低いため、引換券の現金化は実質的に困難です。また、非上場株式を売却するためには特定の買い手を見つける必要があります。
4-5. ユーザーの過剰期待
サービス利用者が「株引換券」を実際の投資商品として誤解し、短期的な利益を期待するリスクがあります。特に上場後のロックアップ期間がある場合、利益確定までに時間がかかる可能性が高いです。
5. 結論:革新とリスクの間で
「カブアンド」は、利用者に「国民総株主」という新しい夢を提供しながら、株式投資への間口を広げる画期的な試みです。しかし、未上場株式の不確実性や上場の難しさを考慮すると、現時点で大きな利益を期待するのはリスクが伴います。
利用者はこのサービスを「支出に対するプラスアルファ」として楽しむ一方、上場や株式価値に関する過度な期待を避けることが重要です。株引換券を「将来の応援」として考え、カブアンドが掲げるビジョンに共感できるかどうかを基準に利用を検討してみてはいかがでしょうか?
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