税理士兼有名ユーチューバー 菅原 由一氏 なぜタピオカ屋は消えたのか?流行ビジネスのカラクリと教訓

『タピオカ屋はどこへいったのか?』は、菅原由一氏が執筆した本で、かつてのタピオカブームとその衰退を切り口に、日本のビジネスや社会の動向について深掘りしています。本書では、単なる流行では終わらないタピオカブームの背後にあるビジネスモデル、消費者の心の動き、そして企業戦略などが緻密に分析されており、読み応えがあります。ここでは、主な内容とその要点をブログ形式でわかりやすくまとめてみます。

1. タピオカブームと消費行動の本質

菅原氏は、タピオカブームの背景には単なる「流行」にとどまらない日本の消費行動の本質が隠されていると述べています。消費者が特定の商品やサービスに飛びつく理由を考察し、ブームが一気に拡大する背景には「フォロワーシップ文化」や「インスタ映え」など、SNS時代の特徴的な要素が絡んでいると解説。タピオカがただの飲み物ではなく、若者にとっては「共感」や「同調」を感じられる象徴であったことを指摘しています。

1-1.若者の消費傾向

タピオカドリンクは単に甘く美味しい飲み物としてだけでなく、「一度は飲んでみたい」「写真に撮ってシェアしたい」といった消費欲求を掻き立てるものでした。特に若年層の消費行動は、商品自体の魅力だけでなく、その商品がSNSでどのように受け入れられ、話題になるかが大きな要因として働いていたのです。

2. タピオカブームに潜むビジネスモデルのカラクリ

タピオカビジネスは、低リスクで高利益が期待できる魅力的なビジネスモデルとして、多くの企業が参入しました。菅原氏はそのカラクリを分析し、「タピオカビジネスが急速に普及し、瞬く間に人気を博したのには、従来の飲食ビジネスにはない特異な構造があった」と述べています。

2-1.簡単な参入と高利益率

タピオカドリンクは、材料費が安く、調理もシンプルで、少ない設備で提供できるため、小規模な出資で参入できるビジネスでした。そのため、タピオカドリンクのフランチャイズや個人経営が急増しました。一杯500円程度で提供されるタピオカドリンクは、材料原価が非常に低いため、利益率が非常に高く設定されていたのです。

2-2.フランチャイズ戦略

菅原氏は、特にフランチャイズ戦略がこのビジネスにおいて重要な役割を果たしたと指摘しています。フランチャイズ形式では、ブランドの知名度と集客力を活用しつつ、安定したビジネスを展開できると考えられていました。しかし、需要のピークを越えると、同じブランドの店舗が至るところに乱立し、競争が激化する一方で、利益の減少というリスクも生まれました。

3. ブームの終焉と店舗の急速な衰退

タピオカビジネスのピークは短命でした。その理由について、菅原氏は市場の「飽和」と「飽き」によるものだと分析しています。

3-1.消費者の「飽き」

ブームに乗ってタピオカドリンクを手にすることが当たり前になったことで、消費者が次第に「一度は飲んだら十分」と思うようになり、興味が薄れました。また、タピオカドリンク自体が高カロリーであるため、健康意識の高まりとともにリピート率が低下しました。

3-2.市場の飽和と利益の減少

一方、店舗の乱立によって市場は急速に飽和しました。同業他社との競争が激化する中、売上が次第に減少し、収益が厳しくなった店舗は次々と閉店する運命に。このように、ブームの最盛期に参入した店舗ほど、ブームの終わりとともに撤退を余儀なくされたケースが多いと菅原氏は述べています。

4. タピオカ屋から学ぶ「持続可能なビジネス」のポイント

菅原氏は本書の最後で、タピオカビジネスの失敗から「持続可能なビジネスモデル」を考えるうえでの教訓を提供しています。流行やトレンドに依存するビジネスには、一時的な利益を享受するメリットがある一方で、次のようなリスクが伴います。

4-1.短期的な利益と長期的な視点

タピオカビジネスは短期的には高い収益性がありましたが、長期的な需要を見極めることなく急激に広がったため、ブームが過ぎると急速に縮小しました。長く愛される商品やサービスを提供するためには、ブームに依存せず、消費者ニーズに合わせて成長できる柔軟な経営が必要だと菅原氏は提言しています。

4-2.差別化と独自のブランド価値

同じ商品が乱立する環境では、いかにして他の店舗との差別化を図るかが重要です。タピオカビジネスでは、特別なブランド価値が築かれないままに店舗が増えたため、ブームが去った後は消費者にとって選ぶ価値が減少してしまいました。持続可能なビジネスには、独自のブランド価値と消費者に支持される強みが不可欠だと述べています。

4-3.フランチャイズの利点とリスク管理

また、フランチャイズを通じたビジネス展開にはリスクが伴うことも忘れてはなりません。フランチャイズ契約に基づくロイヤリティの支払いなどのコストが、利益を圧迫する要因となる可能性もあり、菅原氏は、フランチャイズ選択の際は契約内容を慎重に見極め、長期的にリスクを管理できる体制が必要であると指摘しています。

5.まとめ

『タピオカ屋はどこへいったのか?』は、かつてのタピオカブームから学べる教訓を通じて、日本のビジネスや消費者動向の本質を鋭く描き出した一冊です。菅原氏は、流行に左右されるビジネスには短期的な利益を得るチャンスがある一方、長期的にビジネスを続けるには競争力や独自性が欠かせないことを説いています。

タピオカビジネスの成功と失敗から、私たちは「持続可能なビジネス」の重要性と、消費者の心を長く掴むための戦略について学ぶことができるでしょう。

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